皆さん、こんにちは。
モスクワ音楽院研究科修了のピアノ弾き、アーニャです。
本日、YouTube『アーニャちゃんねる』にてドビュッシー:アラベスク第1番を初見から練習するという動画をアップしました。
何か解説しているわけではない、ただ黙々と練習しているだけの動画です。ペンを探しているところ以外はノーカット。ここがいつもの練習動画とは違うところです。
今回は動画内で解説する代わりにこのブログという場所で、練習していてどんなことを思ったか思い出しながら書きます。
Attention
このブログは個人の見解です。
また、特に身体の使い方は文章だけでは上手く伝わらないので、全てを鵜呑みにせず自分で実際に弾いて良いという感覚を大事にしてくださいませ。
当サイトのプライバシーポリシーにもある通り、この記事で何か不利益が生じても責任は負いかねます。
楽譜はこれを使っています。ご参考までに。
まず、両手で通してみた
曲自体はとても有名ですし、私も何度も聴いていた、且つ音数も多くはない4分程度の曲なので、楽譜を読む前に既に耳で覚えている状態でした。
とはいっても実際に自分で鍵盤を触って音を出すのは初めてでしたので、ところどころつっかえたり、本当に正しい音を弾いているか心配になったり。
ただ初見でなんとなく弾いて満足する、というゴールではなく、これから練習していくというスタートなので、ただ音そのものだけでなく、声部はどう分かれて進んでいるか、音価はどうなっているか、書かれている楽語やアーティキュレーションなど様々な要素を確認しながら初見を進めます。
因みに10分とか20分とかの長い曲や、短くても音符が多い複雑な曲を練習するときは、区切りのいいところで区切って練習していくのが自分にはあってます。
1~38小節目
・1小節目の3拍目で和声が変わるのでペダルに注意。また、左右の受け渡しのときにレガートが途切れて段差を作らないように。(重さや打鍵のスピードなど色々重要になってくるのだけど、この辺の話はまたいつか……ってことで割愛!)
・3小節目からはポリフォニー。バスとソプラノ(メロディー)だけでも曲になる。
音域の広がりを感じつつ立体感が出せるようになりたいところ。
ポリフォニーについて余談ですが、『違う楽器でアンサンブルしている、というイメージ』と、昔とある先生に言われてなるほど、と思った経験があります。それからは音のバランスやそれぞれの声部の音色についてよく考えて意識するようにました。
・6小節目からの2:3のリズムについて今回は割愛します()
右手は指で鍵盤で頑張って追って弾かなくても、一度手を置いて少しずつ重さを移動させたら弾けるポジションでした、私は。
指を上げ下げしながら弾くのではなく、手首を前後斜め……に軽く上手く使いながら(そうするともちろん肘や肩、胴も連動するでしょう)転がるような感覚でやると弾きやすいですし、曲の雰囲気にもあった音になりやすいです。(実際には気持ち指を下げている感覚があります)
・左手のアルぺジオは指を返すときに手を大きく捻りガチに……。ついつい、特に黒鍵があるところまで移動しなきゃ!と思ったり、前の音からしっかり繋げなきゃ!と思うと肘を張ったり手を必要以上に捻ったり……そんな経験はありませんか?
手首主導で腕を鍵盤に対して横に並行移動させる感覚で。また、手を捻って無理やり前の音と次の音を物理的に繋げなくても、物理的には音は繋がっていなくてもペダルで響きで耳で聴いて繋げる感じで……個人の好みではありますが、私は無理のない心地よい響きだと思います。
・この曲全般に言えますが、テンポの指示が多いですね。
ひとつのrit.—a tempoをとってもどのような音楽の流れにするかは奏者ひとりひとりによって変わりますし、同じ人が弾く場合でも会場の広さや楽器の響き方、空気などによっても変わってくるでしょう。
かといって、やはりこれは良くない、やりすぎ、という範囲も厳格には決められていなくてもあるし、作曲者の意図も汲み取りたい。そこらのバランスはとりながら自分の耳や感覚で上手い感じにやれるようになりたいものです(語彙力)
・21小節目あたりから、フレーズの始まりと終わりを体現するのが難しかったです。
昔からずっと何となく耳にしてきた曲なので、だからこそ楽譜からしっかり読み取って、自分の意志で弾かなくてはと感じます。
このようによく知っている曲は楽譜の細かい指示を読まなくても何となくの感覚で弾いても一応曲になってしまうのが怖いところですね。他の人の演奏を沢山聴くことも大切ですが、楽譜をよく読んで自分自身の考えを持って弾かないと。そんな大切なことを特に真剣に教えてくださったのは、大学時代の師であるジェルタノーク先生とコロボフ先生です。
・26小節の全音符は次の音までの間もしっかり聴く。フレーズの始まりの音でもあります。
内声のバランス…特に27小節目のGの音の主張が強くなると個人的に終わったなぁ、と思ってしまいます。笑
・31小節目から32小節目の左手はひとつのまとまりと考えた方がいいかも。
この曲全体に言えることですが、一息が何小節も続きます。1小節や細かいスラーで大きく息継ぎしない方が良さげです。
・32~36小節の右手は2声で出来ています。メロディーであるソプラノは5小節に渡って息が続くのですが、拍の頭がドスンドスンとなりやすい音型ですね。ペダルなしで這うように弾く練習を少ししました。このまま数日続けて慣れさせます。
左手はポルタメントなのですが、点で、響きで、繋げる意識を大きくしています。
35,36小節のペダルは後半になるにつれて少しずつ踏みかえるようにするのが今の好みです。
ふう、疲れた。
39~70小節目
ここから中間部。下属調であるイ長調に転調します。
・39小節目から、めちゃくちゃポリフォニー。バッハにしても何にしてもそうですが、1声部ずつ弾いてみると、どんな声部で構成されているのかを知れるので、楽しいです。機械を分解している感じがします←
・41小節目で特に思いましたが、ドビュッシーの低音には本当に気を付けなくては……と、地面が振動するような曲をよく弾いている私は感じました。
上の声部を支えるんだけど、地面ではなく空気だけ振動している感じ。更に語弊のある簡単な言葉で言うと、重すぎない音。
少し先に進みますが、49小節目fでのバスの音質も特にしっかり検討したい箇所。
・47小節目の右手は6小節目と同じように乗せていきます。人によってはこのパッセージの方が弾きやすいかもしれません。
左手は弦楽器のイメージかなぁ。二分音符の伸ばしているエネルギーを次の音に繋げて。
・50小節目3拍目からのようなハモりも曲中によく現れます。また、少し戻るけれど41小節にはオクターブのユニゾンも。バランスや響きを聴いて……もうあとは弾く人のセンスと技量だわ……。
・63小節目からはrisolutoで転調。決然と弾くけどやっぱり重すぎない音で表現したいです。
67小節目では全体的にオクターブ上がります。先ほどとは違う楽器で奏でているイメージが私はします。
71小節目~最後
初めの部分が戻ってきます。
・89小節目からの右手は2声。たまに90小節目の右手がCis-Fis-H-Eというメロディーに聞こえてしまう演奏に出会うことがあります。立体的に、音のバランスをしっかりと厳しく聴いて弾きたいところ。
また、89小節目の右手の内声とバスは3度のハモりで進行していきます、綺麗←
ここの進行が好きな人は多そう。私もだけど。
93小節目で減7の響きになるのも良さみが深い……(語彙力)
・95小節目のアルペジオは1の指に返すところまでを一塊と考えてポジションを移動させていく感じ。
・103~105小節目は3小節とも同じ音型。1小節毎にオクターブあがって繰り返すことに気が付けば覚えるのも早いでしょう。
最後に
ドビュッシーのアラベスク第1番を譜読みして思ったことをザックリと書いてみました。
何か少しでもヒントになれれば幸いです!
それにしても本当に綺麗な曲だわ……人気があり、有名なのも頷けますわ。
私も引き続き練習します。
それでは、また更新します。ばいばーい!